まえがき
この『理論編』では、人の心が病み、それを起点として治癒へ、そしてさらなる成長へと向う過程を説明します。
これは、人間の心のメカニズムそのものです。
ハイブリッド心理学では、「心が病む」ということを、「病気」ではなく、人間が元から持つ心のメカニズムの一つの表れであると考えています。
それは「病気」ではないので、その克服は「治療」ではなく、「人間としての成長」として成されるのだと考えています。人間の心にはそのための、つまり病んだ心から健康な心へと変化するための力が、そのメカニズムの中に同時に備わっているのだと考えています。
この『上巻 −心が病むメカニズム−』では、まず心を病む過程が人の幼少期からどのように起きるのかを説明します。
人の心の表面に現れる「症状」や「心の悩み」は多様ですが、そこで働いている心理メカニズムは同じです。それを解きほぐしていった時、根底にあるのは、「愛」と「自尊心」そして「人生」に対する私たち自身の姿勢であることが分かってきます。そこには現代人の誰もが免れない、人間の心の業とも言える側面があり、全ての人がその克服を課題としているのだと言えるでしょう。
この本では、そうした人間の心の問題について、心の障害の難解な側面も含めて、その詳しい心理メカニズムをできるだけ分かりやすく解説し、そのそれぞれの側面について克服への方向性も説明しています。
ハイブリッド心理学を本格的に学ぶ上で、まずは人間の心への基本的な理解のために、この本を読んで頂ければと思います。
2009年6月
島野 隆