ColunmとEssay
根本的な治りへの心がまえ
03 悪感情を克服する 2003/05/10

 心理障害の多くの症状は、悪感情そのものではなく、そこから逃れようとする自分の仕立て上げに潜む病理性によっておきて来ます(「悪感情への対面」参照)。

 そのため、まず自分の仕立て上げ傾向を自覚して、それを放棄するのが最初の治りの段階です。
 これがうまく行くと、きっと、生まれて始めて感じるような大きな開放感が起きるでしょう。

 でもその後にはきっと、大元からあった悪感情がいつまでも消えずに残ると思います。
 「自分は駄目な人間だ」。。
 
その自己嫌悪を逆なでするような他人への敵意と憎しみ。。
 そして「自分は愛されない人間だ」という思い。。

 これが残りつづける原因を説明します。
 それは悪感情への対面で説明した 1)悪感情と、2)自分の仕立て上げの両方を通して、心の中に、「自分の栄光の姿」を追い求める心の一部が塊のようにできているからです。

 もう自分を無理に仕立て上げるのはやめた。。
 理由の分からない症状も消えた。。
 でも自分は「こうでなくちゃ」いけない、という自分の姿があり、それを実現しようとあなたを追い立てる心の一部が、残り続ける悪感情の原因です。

 この「自分を追い立てる心の一部」は、理性によって変えることができません。
 そんなものがあるからこそ、心理障害なのです。

 これを消す唯一の方法があります。
 これが、「はじめに」で言った、いままでの心理療法に足りないものの最も重要なものです。


 それは、この心の一部が追い求めている「自分の栄光の姿」をはっきりさせ、どれほどその心の一部がそれを渇望しているかをはっきりさせることです。そしてその願望が現実を無視した、実現不可能な要求であるのを感じ取ることです。
 非現実的な願望だと理解するのではありません。
 非現実的な願望であることを感じ取るのです。

 非現実的だと思いながらその願望を感じるのではありません。
 むしろ、これこそが現実の本当の自分が求めたものなのだとその願望を感じ取るときに、これが起きます。
 その時、この心の一部は大きな絶望状態になります。
 そしてあなたの心から去っていきます。
 これは外から見た姿であり、あなたはただ絶望を感じています。

 自分を追い立てる心の一部が去ったあと、健康な心が、焼け野原に草が生えるように、何も必要なくその部分を埋めています。それが、ただ生きる今を楽しむ心です。
 これが心理障害の根本的な治りの瞬間です。

 つまり、根本的な治りにつながる建設的な絶望が最後のポイントになるということです。

 これが起きた瞬間は、本人はただ絶望感を感じているので、心理障害における破壊的絶望と実は区別が難しいのです。
 絶望は、破滅と再生を紙一重にした、心理障害からの回帰の過程のターニングポイントです。

 ですから、何よりも、絶望感に耐え、それを受け入れる心がまえが大切です。
 簡単に、建設的絶望と破壊的絶望の特徴を書いておきましょう。

 建設的絶望...自分が求めていたものはどうしても得られないものだと感じる
 破壊的絶望...望む通りの姿ではない自分を破壊したくなる

 いずれにせよ、絶望感に流されず、じっと耐える時間が、まさに心の治療の時間なのだと心得て下さい。


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