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ハイブリッド心理療法実践ガイド

 ハイブリッド心理療法は、
「心を解き放ってこの現実世界を生きる」ことで得られる心の成長と健康、そして「自ら幸福になる能力」に向うための具体的な方法を説明します。
 これは「心理障害を治療する」直接の方法ではありません。しかし、心の成長と同時に治癒が起きるというのが、ハイブリッド心理療法の基本的な考え方です。

 この取り組みによってどれだけの「治癒」が得られるかは、この「生き方」をいかに真剣に
選択し、そして実際にこの取り組みの中で「人生を生きる」かに依存します。
 したがって、ハブリッド心理療法であなたがどう「治れるか」については、何も言えません。
 他にも「心理障害を治療する方法」があるのかも知れません。それについては何も言いません。
 この「生き方」を実践するかどうか。
個人の自由と自己責任において「選択」して下さい。

 ハイブリッド心理療法は、その多くが
「心の選択」を説明するものです。
 この療法では次に
「技術」を説明します。「技術」とは、それを学び実践する習熟によって、確実な「効果」が得られる方法のことです。
 しかし、「心の選択」をしないままいくら「技術」に習熟しても、効果は得られないと考えています。今までの生き方とは根本的に違う生き方を、まず選択することから、技術が生きてきます。

 このため、ハイブリッド心理療法では、取り組みの進め方として、学習事項と実践内容を整理し、その
順序を非常に重視しています。
 まず先に示すものからじっくり取り組んでください。また、後に示すものに取り組む時にも、それを何のために行うかの理解が大切です。そのために、必要があれば何度でも前に示す学習や「選択」を振り返って下さい。


T 心の成長への基本姿勢 今までの「不幸になるための生き方」から、正しく幸福を目指すための基本的な姿勢へと方向変換します。
 1 新しい人生観世界観の学習 怒りが幸福にとって有害な感情であることを学びます。
・「心を解き放って生きる」ことの考え方を学びます。
・「正しければ怒って当然」という情緒道徳思考を脱し、科学的に幸福を追求する「心理学的幸福主義」を選択します。
 2 基本的自己受容の選択 「本当の自分の魂」と共に生きること、「何歳にもなって!」という世界に別れを告げることを選択します。
 
U 思考へのアプローチ 心を成長させる生き方について、まず、とことん頭で理解し、合理的思考とはどんなものかを学びます。
 1 心の選択肢の学習 人間の心には、ものごとにどう対処するかの基本的な選択肢が内面のメカニズムとして存在します。これは本人の資質や置かれた環境には一切関わりなく存在する「選択肢」です。なぜならそれは脳のメカニズムだからです。ここでは、心を解き放つ成長に向かうための、5つの選択肢を学びます。
  (1)未知への選択 今の感情で「人生なんて」「自分なんて」「愛なんて」と決めつける思考をやめることです。人間は根本的に変わることができる存在です。これは未知の自分があり得ることを受け入れることから始まります。これもやはり「選択」です。もし今のままでいるのが望みなら、決めつけ思考でいればいいだけの話です。
  (2)自己の重心の選択 自分の感情を決めるものは自分にあるという思考法を選択することです。「怒らされた」ではなく「自分で怒った」。これはさらに、幸福を与えられるものではなく自らつかむものと考えること、また、自分の感情に非科学的な解釈をしないことも含みます。
  (3)イメージから現実への選択 頭の中のイメージで「良く」あることではなく、現実において生み出し、望ましい結果をもたらすことをもって良しとします。これは「べき」や「罪悪感」や「信念」を自分から意識して捨てていくことを意味します。
  (4)過去から未来への選択 あらゆる「望ましくない事態」に対して、人間の脳は2通りの思考法の選択肢を持ちます。過去向き思考は「これは駄目だ」という「破壊の原理」を使います。未来向き思考では「こうするといい」という「自衛と建設の原理」を使います。前者を使うと感情の源泉は枯渇に、後者を使うと豊潤へと向います。
自動的に過去向きになる感情に対しては、「感情分析」で取り組みます。
  (5)断片思考から全体思考への選択 ものごとは常に沢山の側面を持ち、相対的です。そこから一面だけを取り出し、特定の基準から「決め付ける」「白黒をつける」という思考法をやめます。そして多数の側面を持つ一つの本質を見る目を育てます。これが心の包容力を育て、人間としての器を大きくします。
 2 自己・他者・人生への
   揺ぎない姿勢
ここでは、人生のより具体的な内容について、心を解き放つ成長を選択した場合の具体的な思考法行動法を学びます。
 (1)自己評価と自信の心理学 人生を生きる自信を育てるための正しい方向性を学びます。自己評価と自信を混同する誤りを理解し、人間としての自信は最終的に何から生まれるのかの全体感を持ちます。
 (2)愛と心の成長の心理学 愛が心の成長にどのような役割を果たしているのかを理解します。「愛する能力」を正しく育てるための心の姿勢を学びます。
 
V 感情へのアプローチ 思考を合理的にしても、自動的に湧き出るマイナス感情はなかなか消えてくれません。それに対してはより専門的な心理学の助けと共に取り組みます。
 1 感情への基本姿勢 「思考行動と感情の分離」の原則です。感情が病んでいるのですから、感情を鵜呑みにしない客観的な姿勢が大切です。
 2 悪感情の基本的軽減法 悪感情は幾つかの単純な悪循環によって膨張します。まずこの悪循環を断って、あるていど自分での軽減法を習得します。
 3 感情分析と共に歩む生活 精神分析の技術を応用し改良した「感情分析」の取り組みを、実際の生活の中で実践します。感情のもつれを解きほぐし、真実の自分を見出す過程です。
  (1)感情の全般的抑圧の自覚 自分で自分の感情や思考が分からなくなるような状態が起きていないか、確認します。まずそれに気づくことが大切です。
  (2)人生への自分の望みを探る
   @望みを感じ取る
   A「治癒」に何を望んでいるか
   B望みを停止させたものを知る
漠然と「治癒」を願うだけでは、心の成長への動きは起きず、現状維持にとどまります。人生の望みへと向う選択と勇気が、変化の原動力です。3つの観点から「人生の望み」への自分の態度を把握分析します。一見不毛になってしまったかのような土地をたがやすことから始めましょう。
  (3)感情への望ましい姿勢を取る 「感情に対する姿勢」として、望ましいのは以下の4種類です。
   A 積極的にあと押ししたい感情 これは自分の人生に近づく感情といえます。自らそれを感じ取り、積極的に向かうことが望ましい感情です。望み・癒しの悲しみ・勇気・リラックス・etc
   B 吟味分析したい感情 多くの感情は連鎖によって生まれています。その結果、大元の自分の感情が分からなくなるがちです。これをじっくり思い返すという取り組みです。自己像と自己評価・他者像と対人感情・etc
   C ただ感じるだけで流したい感情 「症状」としての障害感情の多くは、それを変えようとしても変えることはできません。虫歯の時の頭痛のように、処置をしたらただそのまま流しておくべきものが大抵です。抑うつ・悲哀・絶望感・etc
   D 積極的に抗戦したい感情 自動的に湧き出るマイナス感情は、それを鵜呑みにして考えると自滅へ向かうことになってしまいます。「心の選択肢」を踏まえて、積極的に抵抗し、健康な心への選択を見出していく取り組みを行います。罪悪感・自己否定・怒り・憎悪・etc
  (4)障害感情の病巣の克服へ
   @「感情の膿」の理解と克服
   A「自己操縦心性」の理解と克服
   B「残存愛情要求」の理解と克服
自動的に湧き出るマイナス感情の大元には、特別な心理メカニズムがひそんでいます。最後にはこれとの格闘になります。より深い自己理解と、この心理学の助けにより取り組みます。

           

人生を生きる過程 心の成長そして治癒は、上のような心への姿勢と共に、自分自身の人生を生きる過程そのもののなかで起きます。つまりこれは「望ましい健康な人間」になるために自分に型枠を押し付ける取り組みではありません。焦りを感じたら必ずここに立ち戻って下さい。基本的自己受容に立ち、唯一の自分の魂に耳をすませることです。どこへ向かうべきかは、その自分の魂のみが知っています。それに委ねることが「心を解き放つ」ことです。

・自分の人生の望みを見出し、それに向かって全力を尽くして生きる過程。
・本当の自分ではない、別の人間として生きようとしていた自分への嘘が破綻する成長の痛み。
・愛へ向かい、幼少期に満たされぬ「宇宙の愛」への衝動に飲まれ、現実の中で不可避的に満たされぬ痛み。
・感情に依存することなく、人間関係へと向かって行く行動法の習得。

そして「人生の答え」は「未知」の中にあること。この全体を同時に見た時、心に成長が起きます。


改訂履歴
2004.12.30 「V.3 感情分析と共に歩む生活」に「(1)感情の全般的抑圧の自覚」を挿入し説明文を掲載しました。
2004.12.14 「V.2 自己・他者・人生への揺ぎない姿勢」の説明内容を(1)(2)へ展開させ、「(2)愛と心の成長の心理学」の説明先リンクを追加しました。
2004.12.09 「V.1 感情への基本姿勢」の説明先リンクを追加しました。
2004.12.08 「U.1 心の選択肢の学習」に「(2)自己の重心の選択」が抜けていたので挿入しました。
2004.12.06 最初の掲載。

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