ハイブリッド心理療法とは

2.適用対象と考慮点

 療法理論としては、基本的に全ての心理障害を対象にしています。
 これは心理障害がもともと「病気」ではなく、心理発達の一形態だと考えているからです。
 「症状」というのは、その発達過程でどの要素が目立つかという結果に過ぎないと考えています。

 また、「症状」よりもその背景にある「生き方」に着目する考えかたであり、「自滅的感情」を直接的な取り組み対象にします。
 「症状」の改善はその結果として生じるという考え方です。
 器質障害による心理障害はもちろん対象外となります。想定範囲については理論編「1.2 このサイトが対象とする心の病の範囲」を参照下さい。

 ただし実践面においては、かなりの制限があると思います。
 基本的に、本人の自己学習、自己努力による取り組みになりますので、それが可能な心身状態であることと、意欲が必要条件になります。
 少なくともこのサイトをご自分で興味を持って読まれる方であれば、全く問題はないと思います。

 また、このハイブリッド療法は、「自立」を強く志向する「自己建設型の生き方」を治癒の原動力にしています。
 上記の条件があっても、このような人生観を好まない場合は、この療法の効果も期待が難しくなります。
 自立より他の援助を好む、自分の内面を冷静に見るよりも感情没入を好む、等の傾向は、最初からこのような自助的療法から人を遠ざけます。
 心理障害そのものが、しばしば人をその傾向に向けるとも言えます。
 このため、心理障害を自分の内面の心理的問題と考え、自己制御によって克服する意思のある、かなり条件の整った方が、最も対象になると考えています。
 そのような意志があってもそれを助ける心理学が実に乏しい現状をまず打破したいのが何よりも私の望みです。


 この心理療法理論は、現在の所、臨床例としては私自身の治癒経験の詳細な分析のみがあり、他は文献レベルの研究を総合して作っています。
 このため実践面でのハウツウはまだほとんどありません。
 実践手法というより多分に、「このような形で完全な治癒に至る過程がある」という一種のモデルだと言えます。

 私個人でできることも全く微力です。
 このようなモデルの認識を通して、「建設的な姿勢」が治癒に決定的な影響を及ぼすという、前向きなモチベーションを、心理医療の現場にまず広めることに少しでも貢献できればと願っています。
 まず心理医療の現場が前向きな認識を持つことが、クライアントが治る意欲を持つきっかけとして何よりも必要と考えています。


2003.5.29
inserted by FC2 system