![]() |
はじめに・「取り組み実践」とメール相談 掲載方法について 島野のメール相談活動 代表的事例 テーマ別事例 |
No.005 不安障害の底にあった「怖がる価値」 |
||
カテゴリー: 心の障害傾向の克服 |
||
相談期間: 2008年5月(約1か月間) | ||
概略 ご相談内容 アプローチの考え方( ・「恐怖の克服」 ) アドバイス内容 概略 「パニック不安障害」に長くお悩みであった方からのご相談です。 症状としては、「拘束された状況で起きるパニック感」が不安で、行動可能範囲に障害が出てくるといったもの。 アプローチとして、「代表的事例」の「事例No.001」や「事例No.002」と同様、まずは外面問題の解決によって内面の安定を図るという流れを模索するべく、「外面行動における安全」を検討したもののあまり効を奏せず、着目視点がやや迷走した後、「自分を変えるとはどういうことか」という根本についてアドバイスした中で、自己分析の例として触れた「怖がる価値」がご相談者にもヒットした、という事例です。 精緻な自己内面分析というのはどのように行うものか、それを役に立つものにさせるキモとは何か、といった点で参考になる事例だと思います。 ご相談内容(抜粋編集)
アプローチの考え方 ご相談者の「症状」および仕事の経緯、そしてご自身での取り組み意識の状況などを、少し詳しく紹介しました。 そこから幾つか、まず言えることがあります。 一つは、仕事の経緯として、残業などがそれほど厳しくない職場であれば、フルタイムの仕事を4年間こなしていたという実践があることです。これは「パニック不安」などの心の障害傾向を抱えるさまざまな人のケースの中では、基本的な心身状態は比較的健康な部類と言えるケースです。 それがハードな仕事になると、一気に崩れてしまうということが起きている。これはまずは、そうしたハードな状況への対処ノウハウのごく単純な不足、もしくは意識法の誤りに原因があることが考えられます。 ただしその一方で、問題を抱えている期間が10年を超えるという長さ、そしてやがては短時間のバイトにおいてもパニック不安になるようになっているという経緯には、多少問題の根深さが垣間見えます。 一方で、取り組みの意識については、ごくありがちな初歩的な誤りもしくは浅さが見られます。 それは「感情と行動の分離」に立った建設的行動法を、「感情を無視して理屈で行動する」ことかと考える誤りであり、「「感情と行動の分離」を心がけようとしているが、「今すぐ帰りたい」という気持ちになると建設的行動ができる状態ではなくなる」といった言葉に、若干その節が感じられます。 また自己分析として「なぜ自分の許容範囲以上に行動しようとしないのか?」と自問するというのは、「内面感情はただ流し理解する」という実践というよりも、自分の内面感情を叱責する実践になってしまっていることが感じられます。 実はこれら全てが、No.005さんの一つの傾向に行き着きます。恐怖心を感じなければ行動できる、恐怖心を感じてはマズい、という感覚と思考、姿勢の中にいるということです。 仕事の変遷がそれに支配されたものであったと言えますし、取り組みも、その焼き直しになってしまっているのです。 そしてNo.005さんは、自らのその恐怖心に対して、無力だということです。それが一度現れると、なすすべなくそれに打ち負けるという風情で。 ・「恐怖の克服」 「恐怖を感じない」ことを目標にすると、「恐怖の克服」の全体を見失います。「恐怖の克服」の正しい姿とは、恐怖の有無によってではなく、客観的に「安全と危険」を判断する目を培い、「安全」を築く行動法を学び実践すると共に、自分が何を恐れているのかを深く理解した上で、それを乗り越えるための「現実場面」へと向かい、そこでいやおうなく流れる「恐怖」の感情を生きることです。それを経た時、「恐怖」の感情は、もはや心の根底において起きないものになるのです。 もちろんこれは、「感情と行動の分離」の基本姿勢から外面行動法そして内面の自己分析、生き方姿勢と価値観、さらにそれらを支える心の基盤といった、結局は取り組み全体の総合的な営みとして成されるものになります。 そうした総合的な取り組みをメール相談で全てカバーするのは無理であり、まずはごく実践的な面において、ご相談者の困難場面の打破につながりそうなポイントがどこにありそうかを探ることになります。 No.005さんの場合、上述のように、基本的な心身状態は比較的健康と思われるケースであり、ごく外面的な対処法のノウハウによって切り抜けることができる可能性もある反面、問題に根深さがある可能性もある。 こうした状況で、No.005さん自身に「これが自分の問題の核心だ!」と思えるものが見えるまでに、多少視点が迷走した感もあったのですが、実はそれは単なる迷走ではなく、取り組みとは、そうした多面的な視点で、順を追って検討する必要があるものであるという、その実践的な姿そのものに他なりません。 もちろんこの事例ではそれを、もっぱら島野が主導して進めています。 「自己取り組み」であるこの心理学の「取り組み実践」とは、「気持ちが楽になる」というような効果ポイントが見えるまでに、すぐにはそうしたものが見えないまま、順を追った視点による地道な検討を行うものである。 そうしたものの実際の姿としても、参考にして頂きたい事例だと言えます。 アドバイス内容 1-2回目アドバイス:仕事の外面的調整からのアプローチ 3回目アドバイス:内面側の糸口探し-1:対人不安と対人思考 4回目アドバイス:内面側の糸口探し-2:「感情依存」と「価値観」 5回目アドバイス:「自分を変える」とは 特別補足解説:自分を変える要ポイントと「感情と行動の分離」 6回目アドバイス:「感情と行動の分離」の基本へ 考察:自己変化への心の芯と「自己分析の技術」 2015.9.28 |