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ハイブリッド人生心理学 メール相談事例集 はじめに・「取り組み実践」とメール相談
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No.005 不安障害の底にあった「怖がる価値」
カテゴリー: 心の障害傾向の克服
相談期間: 2008年5月(約1か月間)
概略  ご相談内容  アプローチの考え方・「恐怖の克服」 )  アドバイス内容

概略
「パニック不安障害」長くお悩みであったからのご相談です。
症状としては、「拘束された状況で起きるパニック感」不安で、行動可能範囲障害出てくるといったもの。
アプローチとして、「代表的事例」「事例No.001」「事例No.002」同様、まずは外面問題解決によって内面安定図るという流れ模索するべく、「外面行動における安全」検討したもののあまり効を奏せず着目視点やや迷走した後、「自分を変えるとはどういうことか」という根本についてアドバイスしたで、自己分析として触れた「怖がる価値」ご相談者にもヒットした、という事例です。
精緻な自己内面分析というのはどのように行うものか、それを役に立つものにさせるキモとは何か、といった点で参考になる事例だと思います。

ご相談内容(抜粋編集)
30代後半女性。10数年ほど前からパニック不安に悩む。きっかけ仕事のストレスで、技術事務派遣連日終電という状態が3か月ほど続き、疲労ストレスがたまり精神的追いつめられた状態のある就寝中突然焦燥感動機が起き、いたたまれず起き出し落ち着くまで家の外にいた、といった体験最初だった。それから頻繁に不安感、焦燥感、動悸起きるようになり、電車にも乗れなくなり、一人でいることも不安になり、仕事辞め実家戻る

それから何カ所心療内科などに行くも、ほとんども聞かず処方されるだけで、効果期待できずやめ、自己啓発本哲学的な本などを参考に、気持ちの持ち方を変えること自己流認知行動療法的なことを試み、徐々行動できる範囲広げられるようになった。
そうして1年後に、同じ職種派遣残業の少ない部署フルタイム仕事復帰
その仕事4年ほど続けた後、正社員希望していた職種転職が決まり、再び毎日終電のようなハードな仕事就いてしまい、3か月後通勤途中再び激しい不安感、恐怖感に襲われ、「あっ、これはだめだ」と感じる。そうなるともう自分立て直すのは難く、1か月後に再び退職

それからはもう近場短時間バイトということで、3時間ほど一般事務仕事7年ほど続けてに至る。
また徐々回復していくだろうと考えていたが、むしろ以前より強く恐怖心を意識してしまい、行動範囲が狭くなってきてしまっている。拘束されることが苦手で、短い勤務時間苦痛となり、予定通り終わらないかなりパニくってしまう。

自分としては、最初症状が出た頃は、焦燥感不安感などの感情的な部分気持ちの持ちようのようなもので克服でき、動悸などの身体症状起きなくなれば普通生活できる思っていた。
しかし次にハードな仕事就いてからは、動悸などが出なくても、自分の気持ちが恐怖を感じることを恐れ、そうした状況を避けるようになった。
今は、出かける練習などをやっても以前のように自信がつかず、常に恐怖心が出て、「もうこんな思いはしなくない!」という気持ちの方が強くなり、改善努力止まってしまっている。

そうして自分でどう対処していけば良いか困っていたが、ようやく最近になって「精神分析」という治療方法があることを知り、それからこのサイトを知り、自分未来希望持てたような気がしている。
現状としては、知識としてようやく言葉意味少し分かるようになってきたというレベルで、取り組みうまく進まない「感情と行動の分離」心がけようとしているが、「今すぐ帰りたい」という気持ちになると、いてもたってもいられず建設的行動ができる状態ではなくなる。
恐怖を感じる状態について感情分析を試み、「なぜ自分の許容行動範囲以上に行動しようとしないのか?」自問すると、ただ「怖いから」「恐怖の感情を味わいたくない」という答えしか浮かんでこない。恐怖心取り組み対象ではないように言われているようですが、こういった問題にどう向かっていくことができるのでしょうか。

アプローチの考え方
ご相談者「症状」および仕事経緯、そしてご自身での取り組み意識状況などを、少し詳しく紹介しました。
そこから幾つか、まず言えることがあります。

一つは、仕事経緯として、残業などがそれほど厳しくない職場であれば、フルタイム仕事4年間こなしていたという実践があることです。これは「パニック不安」などの心の障害傾向を抱えるさまざまな人ケースでは、基本的心身状態比較的健康部類と言えるケースです。
それがハード仕事になると、一気に崩れてしまうということが起きている。これはまずは、そうしたハードな状況への対処ノウハウごく単純な不足、もしくは意識法の誤り原因があることが考えられます。
ただしその一方で、問題を抱えている期間10年超えるという長さ、そしてやがては短時間バイトにおいてもパニック不安になるようになっているという経緯には、多少問題の根深さ垣間見えます。

一方で、取り組みの意識については、ごくありがち初歩的な誤りもしくは浅さ見られます。
それは「感情と行動の分離」に立った建設的行動法を、「感情を無視して理屈で行動する」ことかと考える誤りであり、「「感情と行動の分離」を心がけようとしているが、「今すぐ帰りたい」という気持ちになると建設的行動ができる状態ではなくなる」といった言葉に、若干その節が感じられます。
また自己分析として「なぜ自分の許容範囲以上に行動しようとしないのか?」自問するというのは、「内面感情はただ流し理解する」という実践というよりも、自分内面感情叱責する実践になってしまっていることが感じられます。

実はこれら全てが、No.005さん一つの傾向行き着きます。恐怖心を感じなければ行動できる、恐怖心を感じてはマズい、という感覚と思考、姿勢の中にいるということです。
仕事変遷がそれに支配されたものであったと言えますし、取り組みも、その焼き直しになってしまっているのです。
そしてNo.005さんは、自らのその恐怖心に対して、無力だということです。それが一度現れると、なすすべなくそれに打ち負けるという風情で。

・「恐怖の克服」
「恐怖を感じない」ことを目標にすると、「恐怖の克服」全体見失います。「恐怖の克服」正しい姿とは、恐怖有無によってではなく、客観的に「安全と危険」を判断する目培い「安全」を築く行動法学び実践するとに、自分が何を恐れているのか深く理解した上で、それを乗り越えるための「現実場面」へと向かい、そこでいやおうなく流れる「恐怖」感情生きることです。それを経た時、「恐怖」感情は、もはや心の根底において起きないものになるのです。
もちろんこれは、「感情と行動の分離」基本姿勢から外面行動法そして内面自己分析生き方姿勢価値観、さらにそれらを支える心の基盤といった、結局は取り組み全体総合的営みとして成されるものになります。

そうした総合的取り組みメール相談全てカバーするのは無理であり、まずはごく実践的な面において、ご相談者困難場面打破つながりそうなポイントどこにありそうか探ることになります。
No.005さん場合上述のように、基本的心身状態比較的健康と思われるケースであり、ごく外面的な対処法のノウハウによって切り抜けることができる可能性もある反面問題根深さがある可能性もある。
こうした状況で、No.005さん自身「これが自分の問題の核心だ!」思えるもの見えるまでに、多少視点迷走したもあったのですが、実はそれは単なる迷走ではなく、取り組みとは、そうした多面的な視点で、順を追って検討する必要があるものであるという、その実践的な姿そのものに他なりません。
もちろんこの事例ではそれを、もっぱら島野主導し進めています。

「自己取り組み」であるこの心理学「取り組み実践」とは、「気持ちが楽になる」というような効果ポイント見えるまでに、すぐにはそうしたものが見えないまま、順を追った視点による地道な検討を行うものである。
そうしたものの実際姿としても、参考にして頂きたい事例だと言えます。

アドバイス内容
1-2回目アドバイス:仕事の外面的調整からのアプローチ
3回目アドバイス:内面側の糸口探し-1:対人不安と対人思考
4回目アドバイス:内面側の糸口探し-2:「感情依存」と「価値観」
5回目アドバイス:「自分を変える」とは
 特別補足解説:自分を変える要ポイントと「感情と行動の分離」
6回目アドバイス:「感情と行動の分離」の基本へ
考察:自己変化への心の芯と「自己分析の技術」


2015.9.28

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