島野の心理構造理論

1 心理障害への心理学的アプローチ
1.1 心理障害は「病気」ではない

 うつ病や境界性人格障害などの心理障害は、現在、脳で起きる病気だという見方が一般的です。
 まず、私たちの心理現象は全て脳がつかさどっているので、「脳で起きる」というのは当然の話です。

 しかし「病気」というとき、「症状名」と「病名」という2つの見方があることを考える必要があります。
 症状とは、文字通り表面に現れ、本人や回りの人を悩ませる現象。
 一方、病名という場合は、むしろその原因を重視しています。
 原因としては、健康な身体機能とは別種の異様物(ウイルスや癌細胞)の介入や発生、もしくは器官形態異常や代謝・循環機能の不全など、明らかに健全な身体機能とは異なる事態を確定する必要があります。

 心理障害は、基本的に「症状」です。
 一方で、それを引き起こす医学的原因ははっきりとは分かっていないようです。
 まだ格式高い「病気」ではないわけです。

 しかし、私たちの心理の全てが、脳で起きる現象であり、「症状」であるともいえます。
 それを病気の症状だと言っているのは、医学的判断ではなくて、ある困った状態にそんなレッテルをつけたものとも言えるのです。

 つまり、心理障害も全て、脳の正常な機能の中で起きる、人間心理のひとつの形態だという考え方もできるわけです。


2002.11.14
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