島野の心理構造理論

1 心理障害への心理学的アプローチ
1.7 目指す人格像とは

 「生まれて初めて味わう良い気分」も、あくまで結果であって、事前にそれを知ることはできません。
 従って、心の取り組みの具体的場面においては、これも指針とはならないのです。

 それでは何を具体的指針にするのか。

 このサイトでは、あくまで「心理医学」の立場に立ち、特定の価値観や生活様式には寄らない、
 中立の立場をとっています。
 人間関係や仕事の上での成功は、現代社会においては幸せの大きな要因ですが、
 特定の時代、地域、場面においては、それと異なる生活が求められることもあります。

 あくまで心理学的健全さのみを、このサイトでは扱います。
 このサイトが最終的に具体的指針とするのは、思考・感情・行動の全体の合理性です。

 それは、自分を欺いたり、自分をごまかしたり、自分を放棄したりせずに、感情・思考・行動に矛盾のない人間になるということです。
 例えば、心の中で魅力を感じるものに近づけない、理由も分からず惹かれる、何もないはずの場面で不安や恐怖を感じる、別の性格を装う、矛盾した行動をする、そのいいわけをする、自分で自分が分らない、自分が嫌いである、感情を制御できない、わけもなく悲しくなる、そうした不合理性の全てが取り組みの対象になります。
 
 その取り組みを通じて獲得すべきものは、自分に納得し、自分に責任を持って生きるということです。
 それにより、それぞれの個人は、それぞれの置かれた環境の中で、欲求と感情をありのままに感じ、それぞれの持つ内的外的資質によって自分が最大限に幸せになる方向へ迷うことなく向かうことです。

 その結果、その人がどのように幸せになるのか。
 そこにはもはや心理学を離れた、その人の人生があります。

 「特別の生き方を習得した人格者」などになるのではありません。
 与えられた人生をまっとうする「ただの人間」に、戻るのです。


2002.11.14
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