心理障害の感情メカニズム

1 一次心理過程

  1.1 愛情への要求と基本的不安
  1.2 強迫的な3種類の態度
  1.3 一次心理過程における人格形成


 人の心理発達過程を、一次過程と二次過程に分けています。
 一次過程青春期以前の児童期までの段階であり、二次過程はそれ以降です。

 人の心理発達過程がこの2つにまず分けられるのは2つの理由からです。

1)自我意識の有無

 自我を意識するとは、外界に反応して様々な感情や行動をするだけでなく、そんな感情や行動をする自分そのものを意識することです。

 一次心理過程では、自我意識はない、もしくは心の中で優勢ではありません。
 自分がどんな人間かという「アイデンティティ」の感覚もほとんどありません。
 置かれた環境に対して、生まれ持った内的外的資質によって、「反応」するだけです。

 自我意識が強くなると、「自己像」が生まれてきます。
 そして、外界に対する反応だけでなく、自己像に対する感情や行動が生まれてきます。
 自分は皆のリーダーだ、目上の誰かの影で守ってもらう人間だ、自分だけ愛されないのけ者だ、..etc。

 概して、特別な自己像を、より幼少期から意識しているケースが、心理障害では見られるようです。

 ただし、幼少期から自我意識が強いとしても、その人だけ二次心理過程が先に始まるわけではありません。
 自我意識が決定的に強烈になるのは、次の「思春期要請」によってです。

2)思春期要請

 文字通り、思春期に、人の心理発達過程において重大な「課題」が作用する。
 これを「思春期要請」と呼んでいます。
 詳しくは後述しますが、1)自信への要請、2)優越への要求、3)人格統合への要請、の3つの要請です。

 この思春期要請により、自我意識は決定的に活発化します。
 これ以降の過程を二次心理過程と呼んでいます。


心理障害の芽と発症

 心理障害は主に思春期以降に発症することが知られています。
 それは自我意識において生じた病理といえます。上の区分でも、二次心理過程で発症すると言えます。

 しかし心理障害の芽が生まれるのは、一次過程からです。
 児童期まで何の心理的問題もなく、心理的に健全に育ったにもかかわらず、思春期以降だけの問題によって心理障害になったと思われる事例は、私の知る限りではゼロです

 もちろん、本人としては思春期以降の、「あの事件のせいで」「あいつのせいで」自分が駄目になってしまった、と考えている事例は星の数ほどあります。
 しかし、生育過程を見たとき、そこに障害発症の芽が感じられないケース、逆にいうと健全な心を育てるような児童期が示されたケースは、いまだかつてありません。

 これから述べられる心理障害過程は、全て幼少期からの問題として起きるものです。


2003.6.22

inserted by FC2 system