ケース・スタディ
感情分析過程の例
02 ハイブリッド療法の姿勢と感情分析過程が典型的に現れた数日間の体験

0■ はじめに 2003.9.2

 ここでは、ハイブリッド療法と感情分析の過程の、ある程度本格的な例をご紹介します。
 私自身が数日間をかけて、心の中にあったある障害感情を「自己治療」したと言える体験です。

 ここには次の過程が典型的に現われています。

 1)ハイブリッド療法の基本的姿勢
 感情は感情として尊重した上で、行動については最も建設的な姿勢を考える。
 悪感情は「正す」という姿勢は取らない。建設的姿勢が心の底に作用するのに任せる。

 これがハイブリッド療法の基本姿勢です。
 (参考:「感情分析」技法による人格改善治療 5.実践の方法 5.1 基本姿勢の確立 (3)自己建設型の生き方に変える姿勢とは

 心理障害に根ざす感情についても同じです。
 何か異質で病んでいるような感情があったとしても、私たちは自分を「〜する資格がない」と考えて、建設的に生きる生活を止める必要はありません。
 逆に無理をする必要もありません。感情も一つの事実として、様々な事柄を考慮した上で、最も建設的な行動とは何かを考えて下さい。

 2)感情分析の過程
 ここでは「精神分析」と言わず「感情分析」と呼んでいる特徴が典型的に現われています。
 まず、それは治療室の中で行う作業ではなく、生きる生活の場面そのものの中で行うものです。
 また一般的精神分析が、あまり道筋を示さない自由連想の作業であるのに対して、感情分析ではある程度道筋をあらかじめ想定しています。
 (参考:「感情分析」技法による人格改善治療 6.感情分析の進行過程
 特に最後の段階では、自分についていた嘘が破綻するような非常に辛い体験をそのまま受け入れることを、重要な治癒ポイントとして強調しています。

 これは私自身の頭の中で、ハイブリッド療法の基本的な考えがちょうどまとまった頃の体験であり、私自身にとって結構辛い体験であると同時に、くしくも自分の考えを紹介する良い体験になったことを、その瞬間に感じ、涙の中でこの奇妙な事態に至った自分の身への笑いが出た、実に独特な体験となりました。

 ただし、これらの特徴がこれ程典型的に起きることなどは、めったになく、その点では逆に全くまれなケースになります。
 この分析体験は、次のような特殊な状況で起きたことが、たまたまこのような治癒メカニズムの典型的現われと言える体験につながったと考えています。
 1)私自身の心理障害の大きな部分が既に克服された後の、かなり安定した心を土台にした作業であったこと。
 これは感情分析過程としては、本格治癒の後に得られる好循環過程での出来事に当たります。(参考:「感情分析」技法による人格改善治療 6.2 感情分析の基本的進行過程 (9)効率的治癒の進行(好循環)へ
 これ以前の本格的治療段階では、より長期をかけて混沌とした分析の過程が必要です。
 2)私自身がこのような療法理論の提案者自身であり、分析方法などに習熟していること
 3)問題の感情混乱が、ある他の心理障害の方への援助行動という、援助者(私)側の心理障害感情も現われやすい(抽出しやすい)場面であったこと。

 このため、これは心理障害の治癒までの過程というよりも、あくまでハイブリッド療法の姿勢、そして感情分析のメカニズムを通常はほとんど見られない程明瞭に抽出した例とお考え下さい。
 心理障害全体の治癒過程の例としてではなく、治療メカニズムの勉強の材料として読んで頂ければと思います。
 

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