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ハイブリッド人生心理学

実践ガイド

〜人生のしおり〜
W.「生きて学ぶ」過程・「魂の成長」の道のり

 W−1.「生きて学ぶ」過程と「魂の成長」
   1.「生きて学ぶ」過程と「魂の感情」
   2.各実践項目と「魂の感情」の関係
   3.「2つの心」 と「感情と行動の分離」の深まり
   4.「魂の成長」と「ハイブリッドの世界」

 W−2.人生への道 *未収録*


W−1.「生きて学ぶ」過程と「魂の成長」


3.「2つの心」 と「感情と行動の分離」の深まり

(1)「乳歯の心」と「永久歯の心」

ハイブリッド心理学では、「感情と行動の分離」に始まる実践の全体が、「未熟」から旅立ち「成熟」へと向かうという、心の成長変化を歩むものと考えています。
この成長変化は、次のような様子のものとしてです。

・自己の存在と愛や自尊心といったものへの感じ方が全く異なる、心のあり方の切り替わりが、私たち自身の思考を超えて、「命」の摂理として用意されている。
これは自己を、「与えられる側の存在」と感じるものと、「与える側に回る存在」と感じるものとの違いを最大の中核にした、2つの心があるという心の構造を感じさせる。
これをハイブリッド心理学では「乳歯の心」「永久歯の心」と呼んでいます。

・これは一度に切り替るものではなく、「乳歯の心」から「永久歯の心」への「抜け出し」の体験ごとに、「永久歯の心」側がより強く豊かになっていく。これを生涯繰り返していく、終わりのない成長変化が人間の心には用意されている。

ですから、実践においては、この2つの心の世界の両方を視界に捉えることが、決定的に重要になります。それは「永久歯の心」を無理に自分に当てはめるということではなく、
  −「永久歯の心」の世界があることをイメージできるか
  −自分が成長し向かいたい世界として感じ取れるか
  −「永久歯の心」だとどのように感じ、どんな思考法行動法になるか
という風に、段階的に検討に乗せていくのが良い進み方になります。

テーマ 乳歯の心 がとどまる世界 永久歯の心 が向い得る世界
自己存在の感じ方の基本
「与えられる側の存在」
・自分は守られて生きる存在
・「人の心」の「中」もしくは「下」で生きるという感覚
「与える側に回る存在」
・自分は自らの力(自らの意志)で生きる存在
・「人の心」の「外」で生きるという感覚
対自他・対社会の思考 ・相手の立場で思考できない
・自分を振り返ることができない
・自分の感情を人に解決してもらう必要がある(心の依存)
感情に流されて行動する
・痛みや悪感情を誇張し我慢できない
・あてつけ腹いせで自分を不利にする
・「自分の存在」が人に受け入れられるかという思考(その一方で行動法をわきまえない)
・相手の立場で思考できる
・自分を振り返ることができる
・自分の感情を自分で受けとめる (心の自立)
意志によって行動する
・痛みや悪感情を我慢できる
・自らを不利にすることはしない
・個々の「行動」が人に受け入れられるかという思考

愛される必要がある
・愛される「べき」という思考
・愛されないのはどっちが悪いという思考
・愛されないと怒り憎しみに変わる
・「なつく」「なじむ」型の愛
・一度与えられた愛に固執する
愛されることを必要とせずに自ら愛せる
・愛など意識せず人に肯定的行動
・愛は善悪とは無関係、それぞれが自由に歩む中にあるもの
・愛が怒りに変わることはない
・「目的明示型」の愛
・常に新たな愛へ向かい得る
愛と自尊心の交錯 ・愛がプライド(勝ち負け感情)に汚染される
・「愛されない」ことを「屈辱」「傷ついた」と感じる
・愛と自尊心を同時に相手から与えられようとする
・愛をただ愛として守れる
・「愛されない」ことをただ「悲しみ」として感じ、これを越えてさらに心が豊かになる
・愛と自尊心へとそれぞれ別に 向かうことができる
自尊心
自尊心が相手にどう見られるかに依存する
・愛されること=自尊心
自尊心を自身との関係において築く
・客観的自己評価+自ら愛せること
価値観
神がかり的圧倒基準・空想的
・一面的、断片的
対等基準と地道な向上努力
・総合的


(2)心の成長への妨げの理解

「0-3「感情を鵜呑みにしない」ことの理解」で指摘した、取り組み実践の全体が難しくなるケースの原因を、この「乳歯の心」と「永久歯の心」の視点から考えることができます。

次の2つのケースがあります。

1)感情だけで思考する傾向が強く、「意志」というものが分からないというケ−ス
「乳歯の心」で起きる、愛と自尊心の足の引っ張り合いによる生き方の惑いと心の動揺をひらすら繰り返す生活という様子のケースです。生育来歴の中で「永久歯の心」の芽が育たず、「乳歯の心」だけでいる状態と考えられます。

2)「意志」はあるのだが、「気もち」だけが材料になる思考をしているケ−ス
「永久歯の心」の芽はありながらも、「人の心」というものを「乳歯の心」の世界だけで考えている状態と考えられます。辛さへの思いやりばかりを「愛」と感じ、心が力強い健康な世界になかなか向かず、不幸ばかりに見入る傾向になりがちです。意志による行動の下に隠された愛などを感じ取れない、一面的な価値観になっていることが考えられます。

取り組み実践がなかなかスムーズにできず、成長変化をなかなか感じ取れない場合は、まずこのような心の基本的なあり方が大きな妨げになっている可能性に向き合ってみるのが良いでしょう。そこから、「永久歯の心」の世界へと視野を広げることが重要になってきます。


(3)「感情と行動の分離」の深まり

自分の心の中に「乳歯の心」と「永久歯の心」という2つの心の動きを感じ取ることができた時、「感情と行動の分離」は次のような姿勢へと深めることができます。
内面において「乳歯の心」を受け入れ、外面において「永久歯の心」で向かう。

「乳歯の心」を否定し「永久歯の心」だけを目指すということではないことにご注意下さい。
「感情と行動の分離」の基本姿勢において、内面感情は一切否定しません。感情は、ただそこにあり、流れるものとして、全て受け入れるのです。その上で、外面行動は建設的なもののみにします。あくまでこの基本姿勢の延長上にあります。


(4)外面の豊かさと内面の豊かさ

この「2つの心」を視野に置いた「感情と行動の分離」の深まり姿勢こそが、外面における豊かさ内面における豊かさ双方を実現するための、心の足場になる、とハイブリッド心理学では考えています。

外面向けにおいては、「永久歯の心」を足場にして、より前向きで自己能動型の価値観に立てるようになり、本心からより建設的な行動に向かい、心の底からプラス感情が湧き出る方向へと向かうことができます。その先に、「愛」と「自尊心」へと、互いに妨げ合うことなく向かうことができるようになります。

一方、最初から「永久歯の心」だけで生きられるような人間はいません。「未熟」から「成熟」へと歩む人生の道のりにおいて、「望み」というものはまず「乳歯の心」から生まれるとも言えます。それは得てして、そのまま現実行動へ移すことが難しいような望みです。
そこに、「永久歯の心」を足場にした「孤独力」によって、「乳歯の心」の「望み」を受け入れ見つめるという、「魂の感情」につながる最も深い内面の姿勢が生まれます。


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  2010.10.20

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